石造観音菩薩坐像

 石造観音菩薩坐像(せきぞうかんのんぼさつざぞう)は、一枚の安山岩で造られた、高さ48cmの半肉彫り(注釈1)の石仏で、平成17年に田口町にあった観音塚古墳の上から、宝林寺境内に移された。
 観音菩薩は二重の蓮華座(れんげざ)に座り、背に舟形の光背(こうはい。光明(注釈2)を表す装飾)を背負っていて、光背には5つの種子(仏を表す梵字)が彫りこまれている。なお、像の両脇に刻まれた銘から、応永20年(1413)に造られたことがわかる。
像の鼻や目には一部欠損があるが、全体に保存がよく、年号もあることから、石仏研究の基準ともなっている。
 また、観音菩薩は、薬師如来(やくしにょらい)とともに乱世の現世利益(げんせりやく。神仏により現世で受ける利益)を求める信仰の対象となったことから、当時の民衆信仰の様子を知る上でも貴重なものである。
(市指定重要文化財 平10.4.10 )

(注釈1)半肉彫り:彫刻の技法の一種。文様の盛り上がりの高さが、高肉彫りと低肉彫りの中間のもの。
(注釈2)光明(こうみょう):仏などの心身から発する光で、慈悲や智慧を象徴する。