観音堂跡(阿弥陀如来・塩原慎斎墓所)
 国道291号と上武国道立体交差の南西にある墓地内に、上部に穴のある平らな石が立っている。この石は阿弥陀様として人々の信仰が深く、特に足の病気を治してくれると云うので、諸方からお参りに来る人も多かったようである。昭和20年(1945)頃までは毎年4月8日は祭日として子供たちが集まり、余興などをやって楽しみ、家ごとに赤飯を供え、福引なども行われ、たいへん賑わっていたと云う。ただし、現在は昔ほどは盛大に行われてはいないようである。
この阿弥陀如来の信仰については、一つの伝説が伝えられている。
 昔、法華沢電車停留場より西に約一丁(約109m)ほどのところに、表面を土盛りした石橋があった。いつからともなく、ここを通り橋を渡る者に足の病気の人が多く見られるようになり、荷馬等もこの橋のところまで来ると前へ進まないことがたびたびあった。
 あまりにも不思議なので、神様にお伺いしたところ「土橋の下に一枚の石が土台になっている。この石は以前阿弥陀如来として信仰された石碑であった。それがある時、無信仰の人たが、一枚石で橋の間にちょうど都合がよいという理由で土台石として利用してしまった。今、この石を掘り出して祀れば、病気の人も全快し、交通にも差支えがない。」というお告げがあり、そこで村人たちは、すぐに掘り起こして現在の位置に祀り信仰したところ、病人も治り、以前のように通るのにも困らなくなったという。これより後、足の悪い人はこの阿弥陀如来に祈願し、赤飯をささげて供養する習わしになったと云う。
 穴は、石を運ぶときに使ったのではないかと思われている。
 
(観音堂跡の記述については(46)藤観音跡をご覧ください。)